DX of AEON

イオンのDX事業、人、文化

DXがもたらす新しい価値提供

※この記事は、AEON JOB-EXPO(2022年1月28日~29日)で行われたパネルディスカッションの内容を再構成したものです。

 

イオンは約2万店舗と4000万人のカード会員、57万人の従業員を擁する巨大なグループ企業です。大規模なデータを持つことを強みに、小売業というフィールドでビッグデータを活用したさまざまなデジタル化を進めています。

今回は、株式会社ダイエーと株式会社イオンファンタジーから、DXを担当するお二人にご登場いただき、最新の取り組みや働く環境など、DXがもたらす新たな価値を伺っていきます。

登壇者プロフィール

株式会社ダイエー
ICT戦略本部 ICT企画部部長
山内 洋氏

 

私は1994年にダイエーに入社し、最初の配属は店舗のデリカテッセン部門でした。揚げ物を作り、お店に並べるという仕事ですね。2年目にシステム部門に異動し、分析のための商品マスター登録や、販売実績のデータ画面を作るなど、社内SE的な仕事に従事するようになりました。その後はダイエーの情報システムを担う子会社への出向や、イオングループのシステム開発会社であるイオンアイビスへの出向などを経ながら、システム関連業務を長く続けています。

株式会社ダイエーとは

山内 1957年に大栄薬品工業として創業し、関東近畿エリアに展開するチェーンストアとしての歴史を歩んできた企業です。2015年からイオングループのSM(スーパーマーケット)事業を担う会社として、新たなスタートを切りました。

 

私たちの存在価値は、地域のお客さまの暮らしをライフラインとして支えることです。阪神淡路大震災や東日本大震災でも、被災後すぐに営業を再開し、食料や物資の提供を行ってきました。商品についても安全安心を重視し、食と健康にこだわった売場づくりをしています。

 

ダイエーでは「スマートストア」として、公式スマホアプリをフックにして、お客さまのPOSデータをはじめレシピ情報などを活用することで、快適なお買い物をしていただけるように商品やサービスの開発を行っています。

 

「あらゆるプロセスのデジタル化」という方針を掲げ、セルフレジやセミセルフレジのほか、お客さまが買い物をしながら商品をスキャンしてレジに並ぶ必要がない「レジゴー」の導入を進めています。また、発注業務についてもAIによる自動発注を取り入れ、数量を入力する作業を省略することで、従業員の作業を軽くしてお店の商品の充実や確保に力を入れられるように環境を整えてきました。すべてはお客さまのために、デジタル化に取り組んでいます。

株式会社イオンファンタジー
戦略本部 IT戦略グループ
ゼネラルマネージャー
志田 弘和氏

 

私はもともとソフトウェア会社で数千億円規模の金融系システム開発に従事し、プログラマーやシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーをつとめていました。その後、コンサルタント事業会社で国内外トップ企業の経営課題解消に携わり、大手ソフトウェア会社で派遣大手企業のDX改革や、営業社員3000名のIT教育とシステム開発を行いました。

イオンファンタジーに入社後は、2年目からIT責任者を担当しています。海外視察や講演活動、広報活動を行い、イオングループのブランド認知や社員教育にも携わっています。

株式会社イオンファンタジーとは

志田 イオンモールなどでアミューズメントコーナー(室内遊戯施設)の運営をしている企業です。世界に842店舗、国内では北海道から沖縄まで432店舗を展開しています。(※2022年1月時点。7月末には世界で970店舗、国内で540店舗を展開)

「あそび×まなび」を届けるオンリーワン企業になることをビジョンとして、みんなが楽しく、あそびながら学んでいく機会を与えたいと考えています。

 

これまではイオンモール内の遊戯施設の運営が中心でしたが、コロナ禍を契機にビジネス改革を行い、体験価値提供・複合事業に変えていくことを目指しています。クレーンゲームやメダルゲームなどを設置したモーリーファンタジーやPALOといった主力事業であるファミリー向けアミューズメント施設のほか、お子さまが遊べるインドアプレイグラウンド施設の運営に加え、実店舗だけではなく、スマホでクレーンゲームを遠隔操作するオンラインクレーンゲームや小学生向けのゲームの習い事などのオンライン事業も展開しています。新規事業には積極的に取り組んでおり、最近では温浴施設や体育教室の多店舗展開にも挑戦しています。

 

また、今後はワンフロアをすべてイオンファンタジーが運営し「遊・育・学・食」で構成されるGMS複合エデュテイメントフロアモデルの設置も進めています。SDGsや地域貢献活動も含め、幅広くイベントなどを実施しているので、業態的に面白い企業だと思います。

現在注力しているDXの取り組みは?

山内 「あらゆるプロセスのデジタル化」を進めるにあたって、今後はレジゴーやAIによる自動発注に留まらず、サプライチェーンのマーケティングを行い、計画・生産からお客さまに届くまですべてをデジタルでつなぐことで、最適なサービスを提供したいと思っています。店内の業務では発注やレジでの決済という部分はデジタル化が進んでいますが、補充陳列はまだ手作業が多い部分です。その中には値札や価格の管理も含まれており、今後は個々に手を入れていかないといけません。具体的には、電子値札を導入し、マスターと紐づいた価格を表示することで価格関連の業務を最適化するとともに、お客さまに表示価格と実施の価格が異なることでご迷惑をおかけしないことを実現したいと思っています。

 

また、ウォークスルー店舗という、レジのない店舗の実証実験も行っています。取引先企業と連携し、社内食堂横の売店というクローズな場で2021年9月にオープンしました。すべての棚に重量センサーがあり、天井に多くのカメラを付けており、お客さまがどの商品を手に取ってお店を出られたのかがわかるようになっています。決済端末などもなく、ゲートをくぐれば自動で決済ができる仕組みです。今後は路面店でより多くの方に使っていただけるようにするため、コストの試算に加えて「どのような商品を届ける、どういう店なのか」を決めていかなければと思っています。

志田 イオンファンタジーが取り組んできたこれまでの事例としては、店舗事務所ドアに顔認証を導入し、キーレスでドアを開錠したり、顔写真を取得するシステムを導入してきました。また、事務所内には50インチのタッチパネルを設置し、スマホと同じように情報掲示板、作業タスク、本部指示、連絡などを表示し、パッとみてパッと操作できるようにしています。

 

お客さまへのサービス面では、AR技術を使ったスマホでみる動物園などに取り組んでいます。何もない空間にカメラを向けると恐竜や動物が現れる仕組みで、勉強しながら楽しめる知育事業です。AI分野では、成長の早い子どもの興味・関心を分析するために、大まかな「10代」などではなく、「4~5歳」など細かく区切った分析を行うことができるAIの研究開発をしています。AI専門の企業とともにエンジンのブラッシュアップを進めている段階です。また、当社の売上をビッグデータによってトレンド分析し、気候や季節需要を見越した売上予測にも取り組んでおり、国内450店舗の各装置の売上データを15分毎にデータ収集し集計・分析する基盤が整っています。

 

DXにはもっとも注力しており、上場企業では難しいフルクラウド化を進めています。DXに大切なのは変革に対応できる基盤を作ることです。フルデジタルなリアルタイムIT基盤によって経営判断を即時実現可能とすることで、情報が人に代わって業務遂行する未来を目指しています。

自社の特徴、他社に負けない強みは?

山内 ダイエーだけでなく小売業全体に言えることですが、いつでも仮説検証のプロセスを回すことができる環境があるということ、実験の場が常にあるということだと思います。実店舗を複数営業する中で、さまざまな課題や「こうしたらお客さまに支持されるのに」という仮説が出てきます。そんなときに、すぐに商品や売場を変えることができ、仮説に基づいてそれをデータで確認するという仮説検証のプロセスが常に回ることが強みです。また、一つのお店で成功事例ができたら一気に全店に水平展開するというダイナミックさも特徴ですね。

 

以前あった事例では、店舗に並べたパンが思ったより売れないというケースがありました。そこでクラウドカメラを導入したところ、お客さまの行動だけではなく、従業員のオペレーションや作業の順番に問題があることがわかりました。デジタルによる可視化がお店を変えていくことにつながった事例で、店舗においても積極的にデジタルを使ってみようという意識が芽生えて来ています。

 

志田 当社の特徴は、ベンチャー気質なところですね。専門職で入社した方が多く、デジタルについてもパートナーや業者よりも詳しい。だからこそ最適なものを作れること、技術を学べることが強みです。また、本部の人数が少ないこともあり、やりたいことがあれば身軽に実行できます。

 

私は海外視察も行っているので、メンバーにはさまざまな事例を共有し、グローバルな視点を充実させています。テスラ社のニューロチップの研究やメタバースなど、海外で進んでいる先端技術を知っておくことで、未来を見据えていま何が必要なのかを考えていくことができます。学べる土壌があるからこそ、将来は企業のCTOになれるような力を身につけることができ、活躍の場が広がる会社だと思います。

これからの自社の方向性は?

山内 あらゆるプロセスのデジタル化を進めてはいますが、まだまだ上流工程である生産や加工といった工程のデジタル化が進んでいません。店舗から自動発注をするだけでなく、その発注データをあらかじめ食品加工センターや取引先に渡すことができれば、加工センターの作業も計画的に進めることができ、人時や原材料の調達に無駄がなくなっていきます。ダイエーは子会社にプロセスセンターを持っているので、うまく連携をしながら、上流のデジタル化を進めていきたいです。

 

小売業は変化対応業とも言われますが、コロナで世の中が一気に変わり、収束後また世の中の流れが変わり、お客さまの購買に向かう流れが変わっていきます。デジタルを使ってそうした変化を的確に、すぐに捉えられることを目指さなければいけません。自分たちのお店や商品、サービスを含め、お客さまに合わせて変えていく必要があります。

 

志田 以前、コンサルタント事業を経験した際に「外資の脅威」を見てきました。今後、その脅威から日本の国益を守るために、イオングループの果たす役割は大きいと思っています。グローバル社会で日本を守り生活を豊かにするために、一番意識しなければならないのはローカライズです。地域密着型のイオンだからこそ、デジタル以外の情報を得る機会も多い。DXを進めるのは当然ですが、そうしたローカルな情報も大切にしながら、地域の皆さんの生活を豊かにし、売上を循環できるような社会づくりに取り組んでいきたいと思っています。ただDXに取り組むのではなく、「何をやるか」という意思が大事です。グループ間で協力が進んだら、ダイエーの売場にARのライオンを置いたりしたいですね。

 

山内 その時はいくらでも売場をお貸しします(笑)。イオンにはいろいろな会社があるからこそ、さまざまな価値をお客さまに提供できる。グループ企業同士でコラボレーションが進めば、さらに貢献ができますね。イオンで自分ができること、社会にどんな影響を与えられるかを考えると、すごい環境であることがわかってもらえると思います。

スタッフの働き方は?残業は多いのでしょうか?

志田 なるべく残業はしないよう配慮しています。また、いまは在宅勤務なので出勤は週1度あるかないかですね。

 

山内 ダイエーも残業は規定以内ですね。いまはWEB会議中心で、会議室への移動時間がない分、立て続けになるのが大変かもしれません(笑)。この2年間で、オンラインで意思決定することが当たり前になってきました。

 

スタッフの働き方についても、店舗業務はデジタルによって省力化が進んでいます。お店を巡回しながらWEB会議に参加することが増えているので、時間と場所の制約を飛び越えられる仕組みが十分に浸透していると思います。そうはいっても紙やハンコが必要な場面も残っているので、そういったところも含めてデジタル化を進めたいですね。

 

志田 イオンファンタジーも、コミュニケーションはどんどん簡単になってきています。省人化が進めば、人の仕事は意思決定と修理などだけになっていくと思います。作業はロボットに任せても人の仕事がなくなるということはなく、意思決定が人間の価値になってくると思います。

求職者にメッセージを

山内 イオングループはさまざまなチャレンジができる土壌が整っているし、デジタル化も進んでいます。好奇心をたくさん持ち、何事にもチャレンジする気持ちでいてもらえたらと思います。

 

志田 今後、ITが世の中の事業の根幹になっていきます。GAFAの代表もみんな技術者であり、技術者が経営を学んで国を豊かにするのです。

 

まだ何をやりたいのかわからない人もいるかもしれません。私もそうで、たまたまパソコンが好きだったからITの人になり、周りに仲間が増えていったという感じです。入社したことをきっかけに、やりがいを見つけられることもあるはずです。イオンファンタジーは自分たちがやりたいことを学べる環境が整っているので、「まだわからない」という方がそれを見つけるためでも、世の中を良くしたいという思いでも構いません。ぜひ当社に来てもらえればと思います。

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※掲載記事の内容は、取材当時のものです。

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