PROJECT 04日本に新たな社会インフラを築く
前例のない新規EC事業、
「Green Beans」の立ち上げ。

イオンネクスト株式会社は、「買い物を変える。毎日を変える。」というミッションのもとに、「Green Beans」(グリーンビーンズ)というネットスーパー事業を展開している。買い物を便利にすることで、家事や育児、仕事で忙しい人たちが、家族と過ごす時間や趣味の時間を持てるようにすることを目指す。

AIやロボットを駆使した大型物流拠点を郊外に構え、デジタルテクノロジーによって産地から物流拠点、配送まで一気通貫で流通を最適化した新しいネット専用スーパー「Green Beans」。このプロジェクトに、建設や物流、マーケティング、IT、ファイナンスなど各領域を専門とする多様な人材が集まった。ここに、20代の若さで加わった木元。意思決定をリードする立場として、積み上がっていた課題をどのようにクリアしてきたのか、経緯を聞いた。

イオンネクスト株式会社
経営企画部 部長
木元 海

大学院で経営工学を専攻し、数理最適化やサプライチェーンマネジメントを研究。新卒で外資系コンサルティング会社に入社し、大手通信業の海外市場進出の戦略立案や新規事業立ち上げのプロジェクトなどに従事。2022年にイオンネクスト株式会社に出向し新規EC事業「Green Beans」の立ち上げプロジェクトに加わる。1年間の出向を経て転職し、2023年4月より経営企画部長としてプロジェクトを推進してきた。

01専門領域を持つ
プロフェッショナルが集結し
画期的なEC事業の立ち上げ
プロジェクトがスタート。

「Green Beans」はもともと、コンサルティング会社からの一年間の出向という形で参画したプロジェクトです。しかし、産地から配送までの温度管理を徹底するコールドチェーンなど、画期的な流通の仕組みには当初から大きなポテンシャルを感じていました。経営陣からも、日本に新しい社会インフラを作ろうとする強い意志を感じました。そのうちに私も、経営陣の中に入りプロジェクトを共に成功させたいと思うようになり、1年後にはイオンネクストに転職しました。

入社後は、経営企画部長という立場から、ローンチに向けた課題の洗い出し・解決、開業に向けた意思決定をリードしてきました。現場に入り込んで最初に感じたのは、事業に関わる人たちの多様性と専門性の高さです。土地開発や物流拠点の建設、配送、ITなどさまざまな専門分野を持ち、積み上げてきた経験も常識も使う用語も全く異なります。一方私は、それらの領域に関しては未経験。皆さんが話す内容を正確に理解することが最初の難題でした。そこで私がまず行ったのは、謙虚な姿勢で教わることでした。皆さんの目には、知識不足の私が頼りなく見えていたに違いありません。それでも粘り強く聞き続ける姿勢があれば、相手もそれに応えてくれます。聞いて教わり理解を深め、解決策を考える。それを繰り返す毎日でした。

02新規事業にはパッションが
不可欠。
オープンな議論を重ね、
全ての課題を解決へ。

教わる中で私が心がけていたのは、背景や前提を含めて一から理解することです。会議の場では、各領域のプロフェッショナルが過去の経験則に基づくベストな課題解決策を提案してくれます。だからこそ、その案をGreen Beansのビジネスモデルに適した形に昇華させていくには、そう考えるに至った過去の経験も含めて深く理解する必要があると考えました。

しかし当時はコロナ禍で、会議はフルリモート。お互いに対面で話す機会はほとんどありませんでした。オンラインでは臨場感がなく、議論も活性化しません。会議でも、一見同じ論点から話しているようで議論が噛み合わないこともありました。何より、新規事業に不可欠なパッションが伝わってこないのです。

そこでコロナが落ち着いたサービスローンチの半年前からは、週に一度社長や副社長も交えて部門長以上の全員が集まり、対面で議論する場を設けました。サービスや業務フローの課題を全て洗い出し、その日に決めるべきことは必ず決定する。この緊張感のある会議が全員の意識を変え、課題解決のスピードが上がっていきました。隙間時間では雑談を通して相手の人となりを知ることができるため、議論の場でもより熱量高く話しあえます。並行して現場や各部署、経営陣と縦・横のコミュニケーションも深めながら共に問題解決に向き合ってきたことで、ローンチ前には全ての課題をクリアすることができました。

03現場と経営陣とがアイデアを
出し合い固定観念にとらわれない
思いきった施策にトライ。

ローンチ後は何度か配送車に同乗し、お客さまから「すごく便利」「鮮度が良くて美味しい」という感想を直接聞くことができました。これが「価値あるサービスを提供できている」という自信にもなりました。ただ、お客さまの要望にさらに応えるためには、解決すべき課題もありました。当時、商品部やマーケティング、配送など各部門が利益率の向上、会員増、配送効率といった目標達成を目指す中で、それぞれが考える「最適なサービス」にズレが生じ始めていたのです。Green Beansのお客さまは誰で、その方々が求める商品や配送とはどのようなものか、全員が共通認識を持つ必要がある。そう考えた私は、週に一度の経営責任者会議を提案しました。トラブルが発生している訳でもないのに、忙しい中会議に時間を割くことには誰しも「面倒だ」という気持ちを持ったはずです。それでも、サービスを進化させたいという想いは同じ。いざ会議が始まれば、現場を知る部門責任者と経営陣とが積極的に意見を出し合ってくれ、アイデアがどんどん形になっていきました。

例えば、ターゲットとしている共働き子育て世帯が集まるママフェスへの出店や、不動産業者とタッグを組んだ入居者向けイベントはその一つ。オンライン事業のプロモーション活動を対面で行うことは一見ナンセンスですが、これが好評を博し、認知拡大や会員登録にもつながりました。固定観念にとらわれない思いきった施策を打ち続けてきたことで、サービスはさらに成長していきました。

04時間をかけてでも相互理解を深めることが
失敗を恐れず挑戦へと踏み出す熱量になる。

2024年12月末で、Green Beansの会員は約42万人を突破、売上は順調に拡大しています。お客さまからのご要望もたくさんいただくようになりました。今後はその生の声と蓄積されたデータをもとに、いっそう便利なサービスへと育てていきます。

今回改めて気づいたのは、Green Beansのような前例のないプロジェクトでは、意見を出し合い、疑問をぶつけ合い、理解するというプロセスがいかに大切かということです。特に、外部から参画した私にとって、会社や人が積み上げてきた歴史を尊重した上で合意を形成し、一つひとつ変革していく姿勢が欠かせません。時間はかかりますが、諦めず突き詰め続けていれば同じパッションを持つ人が集まり、力を貸してくれることも学びました。

プロジェクトに参画する前には、経営陣の方から「失敗してもいいから、自分が良いと思うことをやりなさい」という言葉をかけていただきました。実際、失敗はたくさんしましたが、それも「チャレンジをした証」と前向きに考えられるようになったのはこの経験のおかげです。新規事業は、やってみないと分からないことだらけ。大切なのは、失敗したとしてもそこから学び改善していく姿勢です。それこそがイオンネクストがこれからも守るべき価値観であり、失敗を恐れず挑戦できる環境を作ることが私のミッションなのだと今、強く実感しています。