PROJECT 03買い物体験を豊かに変える
総合的なコード決済サービス
「AEON Pay」のリリース。

スマートフォンによるキャッシュレス決済が急速に普及し始めた頃、イオンフィナンシャルサービスでも、お客さまにより便利な買い物体験を提供するべく、イオングループ全体で利用できる新たなコード決済サービス「AEON Pay」の開発プロジェクトが立ち上がった。このプロジェクトに、システム開発経験ゼロで参画した田中。知識を貪欲に学び、関係部署と交渉を重ね、未知の領域を切り拓いていった。

イオンフィナンシャルサービス株式会社
システム戦略企画部 商品企画/開発
田中 健斗

2016年にイオンフィナンシャルサービス入社。イオン銀行綾川店に着任し、銀行窓口業務を経験した後、2019年に社内外の調整役としてAEON Payの開発プロジェクトに参画する。2021年にAEON Payのサービスが開始した後はシステム本部にチームが移管。2023年6月にAEON Payチャージ払い機能をリリースし、現在も新機能リリースに向けた調整役を担っている。

01関係部署との交渉には
効果とリスクをしっかり提示し
誰より前のめりな姿勢で、
熱意を込めて臨む。

私がプロジェクトに参画した2019年には、すでにAEON Payのプロトタイプは完成していました。しかし当時、コード決済サービスのセキュリティが不安視されており、新たなサービスをリリースできる状況ではありませんでした。それでもキャッシュレス化が進むことは間違いなく、お客さま目線に立てばコード決済サービスの提供は不可欠です。さらにより良いものへと進化させ、来るべきタイミングでリリースするべく、プロジェクトを進めることになりました。

社内でも前例のないプロジェクトだったため、開発を進めるにはまず、経営層への打診や関係各部署への説明・調整が欠かせません。投資対効果を数値で算出しリスクも検討した上で、具体的な資料を作成してプロジェクトの意義や将来性を説明しました。特に最初のリリース段階では、イオンカードという既存の決済システムが完成している中で新しいシステムを組み込むことになるため、利用部門に納得してもらうことが大切です。お客さまの利便性を向上させ、新たな収益構造を生むメリットと同時に、追加業務が発生するデメリットをどのように克服できるかを丁寧に説明し、現場目線に立った細かな機能の調整も提案。また、誰よりも私が前のめりの姿勢でなければプロジェクトを前に動かすことはできないと考え、熱意を持って説明を続けた結果、理解と協力を得ることができました。

02設計段階で要件不足が判明し、
上流工程の知識と
コミュニケーションの
重要性を痛感。

開発が本格化すると、想定外の問題が発生しました。システム開発の序盤では、必要な機能や要求を洗い出す要件定義を行い、それを前提に設計へと進んでいきますが、設計に入った段階で要件が不足していることが分かったのです。その原因は、システム開発側と利用部門との間での認識のすれ違い。「話したつもりだった」「理解してくれたと思っていた」という、コミュニケーション不足から生まれる齟齬でした。要件を追加するとなればスケジュールも大きく見直すことになります。その調整やリカバリーをするため、進捗確認ミーティングなどを通してコミュニケーションの頻度を増やし、要件に関する確認も徹底。軸をぶらさず説明することでお互いの認識を一つにし、行き違いがあると少しでも感じればすぐに確認して問題の芽を摘み取りました。

当初私は、自分の担当範囲である計画や設計、要件定義だけに集中していれば良いと考えていました。しかし開発が進むにつれ、上流工程の意思決定が設計や実装に大きな影響を与えることを痛感しました。実現させたい目標を達成するには、ビジネス要件をシステム要件へと確実に落とし込む必要があり、そのためには私自身がシステム全体を理解することが重要です。それを認識してからは、開発チームにも積極的に質問し、自ら学ぶ姿勢を大切にサービスの機能向上を追求してきました。

03ゼロから新しい領域に
踏み込むからこそ、
アイデアを練る楽しさと
成長の喜びが大きい。

もともとイオン銀行で窓口業務をしていた私にとって、システム開発は全く未知の世界でした。不安だらけの中で加わったプロジェクトですが、グループとしての大きな方針がある中で、それを実現するために何が必要か、競合他社の調査もしながらあれこれと紐解き、方策を考えることは楽しい経験でした。追加する機能によっては法務面の対応も必要となるため、関連法も調べる中で新しい知識が身につき、世の中の動きへの理解度も高まっていきます。「チャージ払い」機能のリリース時には金融庁への許認可申請も必要となり、右も左も分からない状態で社内の法務部門に教わりながら当局との調整を重ねました。リリースの直前まで交渉が続いたため緊張感もありましたが、ゼロから新しい分野に挑戦する面白さや、周囲のサポートを受けながら課題を乗り越える達成感を味わえました。

一方で、銀行での経験が活かされた部分もあります。私が担当していた窓口業務では、商品のメリットやデメリットを分かりやすくお客さま目線で話すことが求められていたため、サービス開発でも、ユーザーであるお客さまの利便性を最優先に考えることができました。関係部署との交渉時にも「お客さまから見ると」というワードを頻繁に使っていたように思います。

04経営戦略の実現に直結するという責任感を抱き、
知識を貪欲に学んで開発スピードをさらに高める。

「AEON Pay」は、2021年にイオングループのトータルアプリ「iAEON」に組み込んで一般公開され、その後新機能のリリースを繰り返しています。当初のメンバーも入れ替わり、今は私が前面に立って案件を進めなければならない場面が増えました。以前はチームを引っ張るタイプではありませんでしたが、今はプロジェクトを進めるために自分が率先して動こうと考えるようになりました。もちろん、開発は一人でできるものではありません。外国語力やデザイン力などそれぞれ得意分野が違う優秀なメンバーが集まり、開発を進めています。新機能のリリース後にはメンバーから「チームワークの大切さを再認識できた」という声も多く聞かれ、お互いを補い合いながら、良い関係性のもとで前進できていると感じます。

システム開発は経営方針と密接に結びついているため、戦略実現のためには計画通りに開発を進めるスピードが欠かせません。スピード感は知識の有無によっても変わるため、これからもシステム開発の知識はもちろん、法律やセキュリティ、最新のFinTechトレンドまで貪欲に学び続けたいですね。そして、お客さまの生活をもっと豊かに快適にするAEON Payを創るために、新たな領域にもチャレンジし続けたいと思います。