PROJECT 01世の中にない斬新な商品で
M・Z世代の心を掴む
「トキメクおやつ部」の開発。
「世の中にない商品を生み出し、トップバリュを変革しよう」というビジョンのもと2022年に立ち上がった新たな菓子開発プロジェクト。マーケットインへの転換を掲げ、将来顧客であるM世代・Z世代の心に響く商品の開発を目指して市場調査が始まった。そして2023年、新メンバーも加えた「トキメクおやつ部」として15名のメンバーで菓子開発が本格始動。商品開発に携わった3人に、発売までの奮闘の日々を聞いた。
イオントップバリュ株式会社
商品開発本部
グロサリー商品部安原 慎一
1996年に新卒で入社。店舗勤務を経て2003年にイオン本社のグロサリー商品本部に配属され、菓子を中心にバイヤーを担当。その後イオンリテール東海カンパニーに転勤し、グロサリー部門の責任者を務める。2023年に社内公募でイオントップバリュに着任し、トキメクおやつ菓子プロジェクトに参加。長年菓子業界に携わってきた経験とイオンリテールでの勤務経験を活かし、「トキメクおやつ部」の売場導入を担当した。
イオントップバリュ株式会社
商品開発本部
コーディネーター部田中 玲那
2013年イオンリテール入社後、水産売場での店舗スタッフ経験を経て2018年に社内公募でイオントップバリュに着任。マーケターとして、市場調査や商品企画などの業務に携わる。M・Z世代をターゲットにした飲料「クラフテル」の開発経験を活かし、2023年5月にトキメクおやつ菓子プロジェクトに参加した。
イオントップバリュ株式会社
商品開発本部
グロサリー商品部 住吉 重信
1995年にミニストップ株式会社へ中途採用にて入社。営業部にて店舗経営をサポートするストアアドバイザーを務め、2009年に商品部へ配属され家庭用品を担当。その後2010年にイオントップバリュ株式会社に着任し、グロサリー商品部にて菓子PB商品の開発を務める。2023年にトキメクおやつ部のプロジェクトに携わり、その後プロジェクトリーダーに就任。

01発売日が迫る中、
ターゲットの声を丁寧に聞き取り
斬新な「トキメクおやつ」が誕生。
住吉今回のプロジェクトには、経験豊富な社外のお菓子問屋の方にもメンバーとして参画してもらいました。外部の方が会社に常駐し、イオンの社員と同じ立場でプロジェクトを進めるのは初めて。M・Z世代を取り込んで将来につなげるという会社の本気度を感じました。田中さんも、M・Z世代向けの飲料「クラフテル」の開発経験があることから、チームに加わったんですよね。
田中はい。「クラフテル」でもこれまでにない味やデザインの商品開発に携わることができたので、お菓子でも新しいチャレンジができそう、とワクワクした気持ちで参加しました。ただ、発売日は一年後。期日が迫る中で、M・Z世代の目を引く斬新な商品を開発しなければならないことが大きな課題でした。
住吉私などはM・Z世代とは何?という状態からのスタートでしたよ。まずは菓子市場の分析や、大学生や高校生を含むM・Z世代の方を対象にグループインタビューやアンケート調査をして、今流行っているお菓子や彼らの生活背景について詳しく調査しました。
田中そこで分かったのは、M・Z世代にとってお菓子は単なる嗜好品ではなく、SNSでシェアしたり友達と共感したりする「コミュニケーションツール」でもあること。グループインタビューでは「世界観」や「ストーリー」に共感するという声も聞き、これを糸口に開発進めていきました。
住吉メンバーみんなで共有していたアイデアシートに田中さんが書いていた、「体力を回復できるグミ」というアイデアと「世界観」が組み合わさって生まれたのが「癒しの魔道士グミ」ですね。
田中そうなんです。当時冒険系のアニメが流行っていたこともあり、「この世界観とミックスさせた菓子が作れないか」と考えたんです。他にも、「清見オレンジのおふとんもち」など、サンプルの試食から着想を得たユニークなネーミングとパッケージデザインを採用し、これまで89商品のお菓子を発売しました。

02売れるかどうかは分からなくても、
トライには意味がある。
情熱で交渉し、
バイヤーの心を動かした。
住吉安原さんは売場への商品展開を担当してくれましたが、難しかった点はありますか?
安原これまでにないM・Z世代向けの菓子であることに加えて、単体ではなく一つの商品群として売場に展開する必要があった点ですね。イオングループには、大型店から小型店までさまざまな規模の店舗があります。店舗ごとにどの商品をどの売場に置くのかを決め、全体の中での商品ごとの役割や発売のタイミング、トレンドまでを踏まえて売場づくりをしたことが大きな挑戦でした。
住吉各事業会社への交渉も大変だったと思います。既存の商品もある中で新たに売場を作ることになるので、バイヤーも慎重になるはず。事業会社が果たして商品を扱ってくれるのか、私も心配でした。
安原そうですね。バイヤーからは「限られたスペースにこの商品を置く意味はあるのか」という意見も出て、交渉は難航しました。0から立ち上げた新商品なので、売れるかどうかは誰にも分かりません。しかし、若い世代を取り込むことが将来につながることや、商品の特徴やポイントを説明して「まずはトライしてほしい」と説得しました。
住吉菓子業界で培ってきたノウハウが活かされたのでは?
安原はい。トレンドや市場の変化をダイレクトに感じていたので、売場づくりのノウハウがあることは交渉の場でもアピールできました。しかし何より大切なのは情熱です。「私を信じてください」という気持ちで向き合ったことが事業会社の理解につながったと考えています。

03タイムリミットが
迫る中での商品開発。
成功させるには、
他部署や他社を巻き込む力が
欠かせない。
田中今回のプロジェクトで住吉さんが印象に残っていることは?
住吉プロジェクトの途中で私がリーダーを務めることになったことです。第一弾の商品発売後の8月に就任して、第二弾の発売は9月。突然責任者の立場になり、「どうにか間に合わせなければ!」と必死でしたね。品質管理やパッケージの製造担当課などにも無理をお願いして社内調整に走り回りました。
安原住吉さんのネットワーク力が発揮されましたね。私も、各部署をはじめ事業会社や製造委託先様など社内外合わせて多種多様な方々との連絡・調整が必要でした。毎日やりとりするメールの数も膨大で、時間のない中で交渉を進めなければならなかったので、タイムリミットが近づいてきた時にはいろんな部署に顔がきく住吉さんに泣きついて助けていただきましたね。
住吉商品開発は一つの部署では成し遂げられません。いろんな部署を巻き込んで、時には議論も戦わせながら進めることが大切なので、普段からメールでのやりとりだけでなく、各部署にちょくちょく顔を出すように心がけています。田中さんも、初対面のプロジェクトメンバーとうまく協力関係を築いていましたね。
田中はい。ミーティングでは自分から発信することを心がけ、相手の話を傾聴する姿勢も大切にしていました。私から「こうしてほしい」という要望を伝えることも多かったです。そうすると皆さんの方から私のデスクにまで来てくれて「こんなお菓子はどうかな」と意見をくれるようになったんです。関係性が変わるにつれ、メンバーのモチベーションも上がっていったように思います。

04第二弾の商品発売を終え、勝負はここから。
培った経験を活かしてさらに新たな商品の
開発へ。
安原「経験が人を強くする」と住吉さんがよく言っていますが、まさにその言葉通りのプロジェクトでした。第一弾の発売では37商品、第二弾では54商品と、膨大な数の商品を売場に導入しなければならず、進めている時は「やれるわけない」と思ったほどです。しかし結果的に乗り越えられたことで、自分自身の成長につながりました。
田中私もお菓子への興味がいっそう深まりました。商品もSNSで話題にのぼることが増え、メディアからの取材依頼もいただいて、私にとってはかわいい我が子の活躍を見るようなうれしさがあります。しかし同時に発売後の課題も見えてきました。今もメンバーと商品のアイデア出しをしているところです。ここからはしっかりと時間をかけ、顧客視点に立った商品開発を進めていきたいと思っています。
住吉事前調査・分析の手法や考え方も新たに学べたので、この経験を進行中の商品開発に活かして、より緻密に企画を練っていきたいですね。
安原私も、一つの商品群としての売場づくりを深掘りできたことで、次は幅広い年齢層に向けた新たな商品開発や売場提案ができるのではないかと感じています。ここからが勝負。ぜひ、挑戦していきましょう!